エッセンシャル・デジタルマーケティング

デジタルマーケティング戦略の作り方

エッセンシャル・デジタルマーケティング 目次

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世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング

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目次

PART1 プレ・マーケティングって何? ─ マーケティングからはじめよ

1-1 デジタルの時代 ― デジタル・マーケティングは、何を変えたのか?
  • デジタル・マーケティングって、何?
  • デジタル・マーケティングの特徴❶ ―― 相互の影響力
  • デジタル・マーケティングの特徴❷ ―― パーソナライゼーション
  • デジタル・マーケティングの特徴❸ ―― スピード
  • デジタル・マーケティングの特徴❹ ―― 数値化
  • マーケティング3.0 ―― よりよい世界を作るために

1-2 プレ・マーケティングの時代

  • プレ・マーケティングの時代❶ ―― クラウドファンディングの流行
  • プレ・マーケティングの時代❷ ―― リーンスタートアップの流行
  • プレ・マーケティングの時代❸ ―― ドッグフーディングで既存事業を見直す

 

PART2 本当にそれ、需要ある? ─ マーケティング戦略の作り方

2-1 マーケティングをはじめる前に❶ ―― 需要があるかを確認する
  • 戦略とは何か それって、本当に需要があるの?
  • ニーズに合わせたマーケティング 需要はどうやって調査する?
2-2 マーケティングをはじめる前に❷  ― 明確な顧客像を作る
  • 顧客の「ニーズ」と「デモグラフィック」
  • デモグラフィックは、潜在顧客のニーズを推定するために利用する
  • デモグラフィックに合わせた媒体選択
2-3 マーケティングをはじめる前に❸ ― 競合と集客チャネルを把握する
  • 競合によってビジネスは変化する
  • 競合を知る
2-4 マーケティングをはじめる前に❹  ― 統合的チームを作る
  • 広告マインドから、統合的なマーケティングマインドへ
  • 必要となった「統合的組織」 流入とランディングページ
2-5 マーケティングをはじめる前に❺  ― ブランドを定義する
  • 媒体の違い ―― 食べログとホットペッパー
  • 失敗事例 ―― グルーポン
  • ブランドを作る❶ ―― Facebook
  • ブランドを作る❷ ―― Google
  • ブランドを作る❸ ―― Apple
2-6 マーケティングをはじめる前に❻  ― ボトムアップのチームを作る
  • トップダウンからボトムアップへ
  • 広告代理店任せからの脱却
  • まず行動が必要な時代
  • 分厚い企画書は失敗の元
  • 現場に権限を与える

 

PART3 広告なんて、誰も見ていない? ─ デジタル時代の「RAM-CE」フレームワーク

3-1 フレームワークはなぜ必要なのか
  • マーケティングにおける様々なフレームワーク
  • 「RAM-CE」―― マーケティングフレームワーク
3-2 プロセス❶ ― Reach(顧客に届ける) 
  • 情報過多の時代
  • トリプルメディア戦略
  • トラフィック(流入)を分けてみる
  • トラフィック・ポートフォリオを作る
  • トラフィックの種類を確認しよう
3-3 プロセス❷ ― Attention(顧客の注意を引く) 
  • 広告を出しても見られていない?
  • クリエイティビティと顧客の注目
  • 「目」の写真は人の行動を変える?
  • 視線の流れを理解する❶ ―― Zの法則
  • 視線の流れを理解する❷ ―― グーテンベルク・ダイヤグラム
  • 視線の流れを理解する❸ ―― Fの法則
3-4 プロセス❸ ―(Memory)顧客の記憶に残す
  • 記憶に残ると何が起こるのか?
  • 忘れられないためには「物語」を語るべき
  • ブランド構築は容易ではない
  • フリークエンシー(接触頻度)の効果
  • 「認知」は必要か?
3-5 プロセス❹ ― Closing(締結する) 
  • 売れない理由は?
  • 買う理由と買わない理由
  • クロージング❶ ―― 顧客を安心させる
  • クロージング❷ ―― 選択肢を絞る
  • クロージング❸ ―― 意思決定を簡単にする
  • クロージング❹ ―― 段階を踏ませる
3-6 プロセス❺ ― エンゲージメント
  • スマートフォンの普及と「つながる時代」
  • エンゲージメントの歴史
  • メールマーケティングと「スパム」メール
  • 現代のメールマーケティング
  • MA(マーケティングオートメーション)とナーチャリング

 

PART4 探しものはなんですか? ─ 検索エンジンとSEO

4-1 検索エンジンの誕生とその歴史
  • Googleの誕生と覇権
4-2 SEOの基礎知識
  • SEOとは何か
  • SEOの必須用語
  • SEOが問題?  Webサイトが問題?
  • 検索スパム、ブラックハットSEOとは何か
4-3 SEOをはじめる
  • SEOの基礎❶ ――  顧客にわかりやすいタイトルと説明を付ける
  • SEOの基礎❷ ――  キーワード /クエリの選定
  • SEOの基礎❸ ――  わかりやすいWebサイト構造とPLP
  • SEOの基礎❹ ――  ページの速度を速くする
  • チェックポイント❶ ――  検索順位とクリック率をチェックする
  • チェックポイント❷ ――  読了率と滞在時間でコンテンツの質を確認する
  • チェックポイント❸ ――  直帰率、セッション当たりページ数でUIを確認す
4-4 品質の高いコンテンツを作る
  • 品質の高いコンテンツを作る❶ ―― ページの目的を考える
  • 品質の高いコンテンツを作る❷ ――  コンテンツの種類を考える
  • 品質の高いコンテンツを作る❸ ――  Webページの外部評価について
  • 品質の高いコンテンツを作る❹ ―― ページ品質の評価とは?
  • 品質の高いコンテンツを作る❺ ――  YMYLについて
  • サマリー ―― 高品質なコンテンツとは?
4-5 コンテンツマーケティング/ オウンドメディアの立ち上げ方
  • コンテンツマーケティングとは
  • その媒体、本当に意味がありますか?
  • 専門性の高いコンテンツとオウンドメディア

 

PART5 つながり続ける時代に ─ ソーシャルメディアとモバイル革命

5-1 つながり続ける時代 ― ソーシャルメディアが変えたもの
  • ソーシャルメディアの誕生
  • ソーシャルメディアとユーザーデモグラフィック
5-2 インフルエンサー・マーケティング
  • インフルエンサーとは何か?
  • インフルエンサー・マーケティングの効果は
5-3 Twitter、Facebook、Instagram、LINE ― SNSの運用について
  • KPIの設定
  • SNSの特性を考える
  • ❶オフィシャル型 ―― スターバックス
  • ❷ユーザーグループ型 ―― 良品計画
  • ❸フリースタイル型 ―― タニタ
  • ❹カスタマーサポート型 ――ドミノ・ピザ
5-4 YouTubeと動画マーケティング
  • 動画広告≠YouTube
  • Live vs 短時間動画 ――「生」のよさ
  • 動画広告 vs 画像広告
  • 動画の長さとサイズについて

PART6 世界最強の広告ツール ─ リスティング広告

6-1 リスティング広告(検索連動型広告)とは何か
  • 検索連動型広告の誕生
  • 業界平均と比べてみよう
  • なぜGoogle広告は検索連動型広告の覇者となったのか?
  • SEOとリスティング広告の違い❶ ――  短期間で流入をコントロールできる
  • SEOとリスティング広告の違い❷  ―― 広告文とランディングページをコントロールできる
  • SEOとリスティング広告の違い❸ ――「広告主=お客様」になる
6-2 リスティング広告の基礎の基礎 192
  • リスティングの基礎❶ ―― キャンペーン構成を考えよう
  • リスティングの基礎❷ ―― コンバージョンをセットしよう
  • リスティングの基礎❸ ―― マッチタイプを考えよう
  • リスティングの基礎❹ ―― 無駄なものは除外しよう
  • リスティングの基礎❺ ―― どんどん自動化していこう
  • Google広告とYahoo!プロモーション広告の違いとは?

 

PART7 古きをたずね、新しきを知る─ ディスプレイ・ソーシャル広告

7-1 バナー広告の歴史

  • バナー広告・ディスプレイ広告の誕生
  • アドフラウドとデータの重要性

7-2 媒体を選ぼう

  • Yahoo!と純広告
  • Yahoo! Japanとブランドパネル DSPとSSP
  • リターゲティング /リマーケティング広告

7-3 Facebook/Instagram広告の基礎

  • Facebook広告の誕生とその意義
  • Facebook広告の特徴
  • Facebookクリエイティブの種類
  • Instagram広告は?
  • よりよい運用のために

7-4 Twitter広告の基礎

  • Twitter広告の種類
  • 効果的な使い方

 

PART8 成功するために失敗せよ ─ データ分析とA/Bテスト

8-1 なぜデータ分析はこれほど重要なのか
  • データ民主主義の時代
  • 勘はあてにならない?
  • テストしよう!
8-2 正しいデータを選択しよう
  • 選手を買うのではなく勝利を買う
  • 分析に必要な指標は何か
  • より深い指標で計測する(LTV /ROI)
  • フリークエンシー(購入頻度)で考える
  • どの指標にポテンシャルがあるかを考える
  • 基準値を作る
  • 数値を細かくする(チャンクダウン)
  • コンバージョン単価は下がれば下がるほどよい?
8-3 Google Analytics の分析
  • アナリティクス分析の基本❶ ―― 期間で比較する
  • アナリティクス分析の基本❷ ――トラフィックで比較する
  • アナリティクス分析の基本❸ ―― ユーザー属性で比較する
  • アナリティクス分析の基本❹ ―― コンテンツで比較する
  • アナリティクス分析の基本❺ ―― コンバージョンとアトリビューション
  • アナリティクス分析の基本❻ ―― まとめてみる
  • よりよい分析のために❶ ―― データ量を増やす/トライアル期間を作る
  • よりよい分析のために❷ ―― 統計的アプローチを学ぶ
  • よりよい分析のために❸ ―― 収集データを増やす

プレ・マーケティングの時代

 

世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング

世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング

 

ここでは、事業を立ち上げる前にマーケティングをはじめることを提案します。リーンスタートアップやクラウドファンディングなどトレンドの手法を使いながら、「いかにリスクは少なくマーケティングを行うか」を提案します。

プレ・マーケティングの時代❶ ―― クラウドファンディングの流行

本章では、「プレ・マーケティング」という概念を提唱します。プレ・マーケティングとは、実際に製品を開発し、販売する前に行うべきマーケティングです。たとえば、Webサイトの公開前に、TwitterのフォロワーやFacebookページのいいね数、メールマガジンの購読数が一定数あれば、最初の反応が変わってくるでしょう。スマートフォンの普及により、顧客とつながる方法が多様化していることも見逃せません。このように、製品やサービスの公開前に顧客とつながることは、様々な好影響を、製品やサービスにもたらします。

2016年11月、戦時中の広島県呉の生活を描いた長編アニメーション映画『この世界の片隅に』が公開されました。この映画は公開から1年半以上経った今でも(18年8月現在)、劇場で上映されており、異例のロングランです。18年に入って、興業収入が27億円を超えたと言われています。

 

公開当初はわずか63館での上映でしたが、観客の口コミによって評判が徐々に広まり、結果、映画館での上映は400館を超えました。実はこの映画、他の映画とは違う画期的な点が1つあります。それは、クラウドファンディング(不特定多数による、リターンを前提としない投資)を利用した資金調達で、制作費の一部を負担していることです。実際、3374人の一般のファンから出資を募り、約3912万円の資金調達ができました。

このクラウドファンディングでは、出資者が6つの支援コースの中からコースを選び、出資します。支援コースによっては、本編のエンドロールに出資者の名前がクレジットされるそうです。

用語解説 : クラウドファンディング(Crowdfunding)

多数の出資者から出資を受け、現金ではない形でリターンを返すファンディング(出資)手法を指します。

制作前からお金を出す明確なファンがいることから一定の需要が見込め、彼らが口コミで広めてくれるので、実際に製品完成後もSNSなどでの拡散が期待できます。ファンディングプラットフォームとして世界的に有名なKickstarterは、17年9月に日本版サービスを開始しました。

クラウドファンディングは寄付ではありません。

純然たるマーケティングの手法です。事前に一定額の資金を集められるため、クラウドファンディングのような仕組みは、制作する側にとっても効果が高いのです。

このように、製品完成前や事業スタート前からマーケティングによって顧客を集める手法を、本書では「プレ・マーケティング」と定義しています。なぜプレ・マーケティングという手法を提唱しているのか。それは、充分なマーケティングを行わないまま失敗した企業が、今までに多数存在してきたからです。

クラウドファンディングの流れ
❶一定額を出資
❷一定額に達すれば、プロジェクトがスタート
❸出資額に応じて、金銭ではないリターンを提供

まず、需要があるかどうかを確認して、それから作る。これによって、誰もほしがらないものを作ってしまうという最大のリスクを避けることができます。

クラウドファンディングだけではありません。スタートアップ企業でも、完成版の製品を公開する前に、未完成の「ベータ版」の製品を公開し「ベータリリース」として、顧客を集めるなどの手法が取られます。

 エドセルの失敗

もっとも有名な例は、アメリカの自動車メーカー、フォード社が発売した「エドセル」でしょう。当時のフォード社は、世界最高の市場調査能力を持っていました。様々な機能と斬新なデザインを備えたその車には、重大な欠点がありました。一度も顧客へのテスト販売をしなかったのです。エドセルは、フォード社が大々的に発表し、全国で発売されましたが、大失敗に終わりました。ほとんど売れないばかりか、フォード社に莫大な負債を残してしまったのです。


AdKeeperの失敗

何億、何十億円も投資を受けたベンチャー企業やスタートアップ企業でも同じ失敗をすることがあります。スタートアップ企業のAdKeeperは、新聞広告を切り抜きするように、オンライン広告を保存できるサービスを顧客に提供していました。しかし、数千万ドルを調達した後にわかったのは、顧客は広告を保存などしたがらない、ということでした。(参考

かつては、プロダクト・アウトかマーケット・イン、どちらが正しいのか?という論争がありました。今ではナンセンスな問いでしょう。顧客が必要とするものを作らなければ、大失敗することが明らかになっているからです。マーケターに求められる能力は、顧客が必要とするものをどのように実現し、表現するか、ということです。プレ・マーケティングを行わない理由は、何ひとつありません。

プレ・マーケティングの時代❷ ―― リーンスタートアップの流行

プレ・マーケティングの考え方は、生存競争の激しい、北米や欧州のスタートアップ企業(ベンチャー企業)にも浸透しています。スタートアップ企業は、今までに存在しないサービスを立ち上げます。つまり、すでにニーズが証明されている既存事業よりも、より多角的な観点から、顧客のニーズが存在するかを検討しなければいけません。特に、トヨタのかんばん方式を起業や新規事業の立ち上げに応用した「リーンスタートアップ」の手法は、マーケティング・ファーストそのものであると言えるでしょう。

コストを掛けずに、MVP(必要最小限の製品)を作り、可能な限り早く顧客からのフィードバックを得ることを目的としたスタートアップ立ち上げのメソッドです。「複雑な計画を立てるのではなく、シンプルにはじめる」「軌道修正を常に繰り返す」などのモットーがあり、スタートアップ業界ではメジャーなメソッドとなっています。

リーンスタートアップは、2008年にアメリカの起業家であるエリック・リースが提唱しました。リースは、著書『リーン・スタートアップ』(日経BP、2012年)の中で「最大のリスクは、誰もほしがらないものを作ってしまうことだ」と述べています。

リーン・スタートアップ

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  • 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
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ベンチャー業界の分析企業、CBInsightの調査1-6によると、スタートアップ企業やベンチャー企業が失敗する最大の理由は「そもそもマーケットに需要がない」ことを1番に挙げています。
このような現状を元にしたのが、リーンスタートアップの概念です。私たちの住む世界はとても不確実で、計画どおりに物事が進むとは限りません。だからこそ、常に顧客とつながり、製品やサービスを改善し続ける必要があるのです。

プレ・マーケティングの時代❸ ―― ドッグフーディングで既存事業を見直す

「ドッグフーディング(Dogfooding)」「EatYourOwnDogfood(自分の犬の餌を食べてみろ)」。これらは、IT業界の現場でよく使われる言葉です。意味は、新しい製品や機能を開発したとき、まずは社内で率先して試用することを言います。それでは、既存事業を見直すときに、ドッグフーディングはできないでしょうか?自社だけではなく、付き合いの長い企業などにまず試してもらうことで、その後のマーケティング戦略を明確にすることができるはずです。

デジタルの時代 - デジタル・マーケティングは、何を変えたのか?

 

世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング

世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング

 

デジタル・マーケティングが旧来のマーケティングと違うことは、皆さんよくご承知だと思います。ここでは、いったい何が変わり、何が変わっていないのかについて考えます。ポイントは、「相互の影響力」「パーソナライゼーション」、そして「スピード」です。

デジタル・マーケティングって、何?

この本を手に取られた方は、マーケティングの重要性を充分に理解されていると思います。

本書では「エグゼキューション(execution:実行)以外の全てのプロセス」をマーケティングと定義し、「インターネットを通じて顧客/潜在顧客と関わるあらゆる手段」をデジタル・マーケティングと定義しています。

自社のWebサイトやSNSのアカウントを持っていれば、その時点でマーケティングが必要になります。現に、多くの企業がTwitterやLINEのアカウントを持って、運用しています。また、Webサイトを持たない小さなレストランでも、レビューサイトには掲載されているかもしれません。

つまり、これからの時代、ほとんどの企業にとって「デジタル・マーケティングは必須」ということです。

では、デジタル・マーケティングはかつてのマーケティングに比べて、あるいは現代はかつての時代に比べて、何が変わり、何を変えようとしているのでしょうか。その疑問について考えるために、いくつかの具体的な事例を見ていきましょう。

デジタル・マーケティングの特徴❶――相互の影響力

東京都北区にある「中村印刷所」という小さな印刷所をご存じでしょうか?この印刷所が日本で注目されるきっかけになったのが、Twitterでした。

2016年、中村社長は数千冊のノートの在庫に頭を抱えていました。のちにヒット商品となる「方眼ノート」です。

  製本所を営んでいた男性とともに中村社長は特許を取得し、発売しましたが、当初は製作者2人の予想に反して、ノートは全く売れませんでした。

元製本所の男性もノートの売上が伸びないことに責任を感じつつも、打開策は考えられず、孫娘に「学校の友達にノートをあげてくれ」と手渡しました。

「私は使わないけれど、もしかしたら......」と考えた孫娘がTwitterで宣伝したところ、リツイートはあっという間に3万を超えました。それに従い、自社のWebサイトのアクセスも激増し、続々と追加発注も入りました。

その後、ノートは大手企業と提携し、今では量販店でも購入できるほどの人気商品です。


中村印刷所は、大きな金額をかけてCMを打ったわけではありません。交通広告など、大々的なプロモーションをしたわけでもありません。

しかし、「これは使える」という多くの人のポジティブな思いがTwitter上で話題を呼び起こし、その商品を必要としている人たちの手に届いたのです。

一方、中村印刷所のストーリーとはまるで反対の話もあります。

大手企業でPR担当をしていたごく普通の女性の話です。彼女はフライトの直前にTwitterを開き、自分の数少ない170人のフォロワーに向かって、アフリカ旅行へ行く前に、アフリカに関するちょっとしたブラックジョークをツイートしたのです。

彼女は飛行機に乗り込んだのですが、ネット上では恐ろしいほどたくさんの反応が沸き起こっていました。

いわゆる「炎上」です。

彼女はその夜、世界一の有名人になりました。それも、最悪の形で。彼女は即刻会社を解雇され、その後長く精神的なダメージに苦しむことになりました。

この2つのストーリーは、一見反対のことを示しているように見えます

「テクノロジーは素晴らしい、いや、ひどいものだ」

「私たちはとても悪い人間だ。いや、とてもいい人間だ」

このストーリーが示した意味は、いい意味であれ、悪い意味であれ、私たち1人ひとりが「炎上」などを通じて、企業や他者に影響を及ぼしたり、気に入った商品を広めたりする、ということです。

ドキュメンタリー監督のジョン・ロンソンは、TEDトークでこう述べています。

ソーシャルメディアの偉大な点は、声なき弱者に声を与えたことです。でも私たちは監視社会を作りあげつつあります。そこで生き残る最も賢い方法は、声をあげないことなんです。

ジョン・ロンソン: ネット炎上が起きるとき | TED Talk

ありとあらゆる企業活動は相互的になり、レビューされ、つぶやかれ、写真に取られ、シェアされるようになりました。

ソーシャルメディアの世界では、たとえば不用意な発言1つで企業が多大なリスクを被る一方、意図せずに発した言葉によって一個人が一瞬にして世界的な有名人になる可能性もあります。

20世紀は企業主導の社会でしたが、現代は顧客主導の社会と言ってもよいでしょう。

「F-factor」という言葉をご存知でしょうか?

F-Factorとは、フィリップ・コトラーが自著『コトラーのマーケティング4.0スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版)の中で提唱した概念です。

F-Factor

  • Family(家族)
  • Friend(友達)
  • Follower(フォロワー)
  • Fans(ファン)


F-factorは、上記の4つをまとめた造語です。ソーシャルメディア時代において、影響力を及ぼしうる様々な要素についてまとめられ、提唱されたものです。

顧客や消費者の声が口コミによってすぐに届くということは、企業側も改善ポイントをすぐに見つけられるようになったということでもあります。顧客や消費者が口コミによって大きな力を持つ一方で、企業が顧客の口コミから多大な影響を受けるようになってきたこと、これがデジタル・マーケティングにおける大きな特徴です。

デジタル・マーケティングの特徴❷――パーソナライゼーション

もう1つのデジタル・マーケティングによる大きな変化は、パーソナライゼーションです。

パーソナライゼーション/パーソナライズ

顧客の行動履歴、閲覧履歴などを元に、コンテンツを最適化する技術です。たとえば、Google検索は顧客の検索履歴を元にパーソナライズされ、Amazonのおすすめ商品は、顧客の購入履歴を元にパーソナライズされています。

屋外広告、テレビ・ラジオCM、新聞・雑誌広告などは、読者や視聴者の属性から出稿する媒体を選ぶ程度でした。しかし、デジタル・マーケティングにおいては、ターゲティングの精度を従来の広告では考えられないほど細かく設定することが可能です。

ターゲティング

特定の顧客を狙って広告やコンテンツなどを打つことです。デモグラフィック(ユーザーの属性)ターゲティングや地域ターゲティングなど、様々な種類があります。

年齢や性別だけではなく、住んでいる地区単位、学歴、趣味嗜好までを細かく設定して、最近訪れたWebサイト、最近検索されたワード、最近出したメール(たとえばGmail上の広告などは、メール内容に合わせて広告が変化します)などからもターゲットを絞り込むことが可能になっています。

それではなぜ、これほどターゲティングが細かくなったのでしょう?多くの無関係な広告がインターネット上に溢れていることも1つの要因です。

マーケティング担当者向けのWebサイト「MarketingDive」の調査によれば1-3、顧客の71%はパーソナライズされた広告を好んでいます。その最大の理由は「無関係な広告を減らすのに役立つ(46%)」というものでした。自身にとって無関係なメッセージに人は興味を持ちにくいものです。

テレビCMが最大公約数的なプロモーションを目指したのとは正反対の進化が、デジタルの世界では起きています。

全てのメッセージは、より個人的なものになり「あなただけに」という形を取って現れるようになっていくでしょう。

デジタル・マーケティングの特徴❸――スピード

最後にもう1つ、デジタル時代の大きな特徴を挙げましょう。スピードです。たとえば、新しいテレビCMを流すには、通常、企画や制作などで一定の期間が必要です(少なくとも、1日2日で終わることはないでしょう)。新聞広告も、数週間の準備が必要です。しかし、デジタルであれば、事情は全く違います。一瞬にして顧客のフィードバックが得られるからです。

1時間だけ広告を試してみて、上手くいかなかったら広告の文章を変える、あるいはブログの記事を変更するということも、もちろん可能です。

スピードには、負の側面もあります。「デジタル・マーケティングは万能か?」というと、そういうわけでもありません。マーケティング担当者は、広告サイクルの速さに過重労働を強いられるからです。

 

イギリスのデジタル・マーケティング担当者は平均で毎週8時間余分に働いており、約半数(46%)が過労を感じ、約3分の1(30%)が、充分な給料をもらっていないと感じています。

digitalmarketingmagazine.co.uk


多くの日本企業でも、マーケティング担当の人数が充分ではありません。そのしわ寄せは、担当者、あるいは広告代理店の担当者に行くことになります。

実際に、広告代理店の若い社員の方が、過労などを理由にして亡くなったという悲惨な事件も起こっています。デジタル・マーケティングには、新しい時間サイクルが存在することを認めた上で、それに対応できる人的リソースを確保することが、現代の企業には求められています。

デジタル・マーケティングの特徴❹――数値化

かつて、「百貨店王」と呼ばれた偉大なマーケターである、ジョン・ワナメーカーは、かつて「広告費の半分が金の無駄になっていることはわかる。わからないのはどちらの半分が無駄になっているのかだ」と言いました。この言葉はよく知られています。

 

有史以来、広告はこのような欠陥を抱えていました。テレビ広告にせよ、屋外広告にせよ、その成果を検証することは簡単ではありません。

しかし、デジタル広告では、より簡単に効果検証が可能です。もちろん、全てを効果検証できるわけではありませんが、旧来の広告に比べればはるかに効果を検証しやすくなりました。これは、デジタル・マーケティングが広告業界に起こした、大きなブレークスルーと言えます。

デジタルマーケターは、マスマーケティングの分野からは「数値を見ているだけで戦略がない」と揶揄されることもありますが、実際には、より多くの数値を確認しながら、戦略的な視野を持つことができます。

マーケティング3.0――よりよい世界を作るために

世界でもっとも有名なマーケターであるフィリップ・コトラーは、自著の『コトラーのマーケティング3.0ソーシャル・メディア時代の新法則(』朝日新聞出版、2010年)の中で、ソーシャルメディアの時代に際し「、マーケティング3.0」という概念を提唱しています。

コトラーの定義するマーケティングの進化

マーケティング1.0

製品中心
大量生産・大量消費
1950~60年代

マーケティング2.0

消費者中心
価値の多様化
1970~1990年代

マーケティング3.0

人間中心
ヴィジョン主導
2000年代~

マーケティング4.0

自己実現
共創の時代
2010年代~

コトラーは、前述の自著の中でこのように述べています。

現在、われわれはマーケティング3.0、すなわち価値主導の段階の登場を目の当たりにしている。マーケティング3.0では、マーケターは人びとを単に消費者とみなすのではなく、マインドとハートと精神を持つ全人的存在ととらえて彼らに働きかける。消費者はグローバル化した世界をよりよい場所にしたいという思いから、自分たちの不安に対するソリューション(解決策)を求めるようになっている。
混乱に満ちた世界において、自分たちの一番深いところにある欲求、社会的・経済的・環境的公正さに対する欲求に、ミッションやビジョンや価値で対応しようとしている企業を探している。
選択する製品やサービスに、機能的・感情的充足だけでなく精神の充足をも求めている。

デジタルの世界においては、相互の影響力が強く働きます。つまり、多様な人々の価値観に応じて、意図しない形で評価される可能性がある、ということを頭に入れておく必要があります。

私たちは一方通行にメッセージを押しつけるのではなく、相互が影響力を持った時代に生きているのです。大きなパラダイムシフトが起きたことを認めなくてはいけません。

よくわからない横文字があなたの会社のデジタルを駄目にしているのかもしれない

デジタルマーケティング業界ってやたらと単語が多いですよね。「御社のSEMのKPIはCPAとROIとROASのどれですか?」「あー、日時ではCTRとCPA見てて、月次ではARPPUとARPU、後クオーターで30daysLTV見てROI出してます」みたいな会話は普通にあります。

ところで、私は問いたい。

 

みんなそんなにちゃんと理解しているのか?と。

 

私も新卒は外資系企業で、部署もGBOの中のSMBの中のSBSにいたので、割と耐性がありますけど、それでも時々、よくわからない単語というのは出てきます。

この前「EFOってどうされてますか?」と聞かれて「あー、今はちょっと手を伸ばせてないんですよね」といかにもそれは検討しました感を出して答えたんですが、あとでググったところ「エントリーフォーム最適化(Entry Form Optimization)」でした。

知らなかった……。

 

こういうことは、結構あります。

そういう時に「ちょっとそれどういう意味ですか?」とは聞きづらい。この業界がそれなりに長い僕でもそうなので、新しく担当になった方とかだと、余計そうじゃないでしょうか。

特に、「広告は運用代理店に任せている」「分析は担当者に一任」というようなケースだと、意外と知らなかったり、間違って理解している単語があるかもしれません。

「CPA(コンバージョン単価)」を普段、我々は当たり前の知識のように言っているけど、普段運用をしないような事業者の方がその意味をきちんと肌感的に理解されているでしょうか(例えばCTR(クリック率)が1%落ちるということがどれくらいのインパクトなのか、とか)。

CPAは費用÷コンバージョン数だよね、ということまではわかっていても、「コンバージョンと一口で言っても単価の違いがあるよね」「継続率の違いがあるよね」「CPAが多少上がってもコンバージョンを増やしたほうがいいケースもあるよね」といった、ある程度暗黙の了解になっている部分は全く語られていないはずです。

そういった語られざる部分が、略語にした時に、抜け落ちてしまうのではないでしょうか。

ちょっとずれるけど、「働き方改革」とか「女性活躍」みたいなスローガンも似たようなところがありますよね。

 

専門家が語らないこと

時々クライアントと代理店のミーティングに同席することもあるのですが、当たり前のように横文字を使われると、あまり知識のないクライアント側が黙ってしまうことも少なくありません。

詳しい人はどうしても「これはわかっているだろう」という前提で進めてしまうがゆえに、基礎的な部分についてはおざなりになりがちなんですよね。

単語が通じていれば、反論したり質問したり出来ても、単語自体がわからないと「よくわからないから任せておこう」となってしまうのも当然でしょう。

説明するのがめんどくさい部分を、横文字の短縮言葉にすることで、なんとなくごまかしている、という側面はないでしょうか。

逆に言うと、単語さえ使っていればなんとなく中身のあることが話せているような感じが出てしまう、という風潮があります。

「エンゲージメント率が上がった」とか「CPAが下がった」と言った時、結局それが大枠のマーケティングの中でどういう意味を持つのか、という点について、どの程度合意ができているのか、ということです。

本を書いてみて思ったこと

本を書いてみてわかったことなんですが、いわゆる業界の単語を使わずにきちんとマーケティングについて説明しようとすると、結構大変です。

独自の単語や略称というのは「わかった感」を醸成させるのに重要なのですが、本質的にお互いの理解が進んでいるかと言うと微妙なところがあって、特にこの点はクライアントとエージェンシー(広告代理店・運用代理店)・コンサルタントとの間で顕著なのではないでしょうか。

少なくとも、デジタルを主戦場にする方々が安易に使っている単語が本当にクライアント側でも理解できているのか?ということを問いかけていかない限り、本質的な意味で協業というのが難しいのではないか、と考えている昨今です。

そういう意味では、翻訳作業と言うか、噛み砕いてお互いに肌感を合わせていく作業というのが結構重要なのかな、でもそれすごい難しいな、と感じる今日このごろです。

余談

あえていいますけど、難解な用語を使いまくるから門外漢には凄そうに見えていても、その道の人から見たら大したことを言っていない、という人は結構どの分野でもいるんじゃないでしょうか。

わかりやすすぎるとなんか凄そうに見えない、みたいな。逆もあるんでしょうけどね。

女性向けマーケティングを絶対に成功させる方法(と、マーケティングにおけるジェンダーバイアスの話)

先日、このような記事を書いたところ、多くの人にご覧いただきました(ありがとうございます)。

Instagramと同じように、「女性向けマーケティング」について聞かれることも多くありますが、そんなの僕に聞いてどうするんだという話ですよね。

 

ということで、二度と僕にそういう相談が来ないように、女性向けマーケティングがことごとく失敗する理由である「マーケティング業界を蝕んでいるジェンダーバイアス」の問題について書きます。

あ、女性向けマーケティングを成功させる方法は、一番最後に書いてありますので、読みたかったらどうぞスクロールしてください。長いので。

 

「女性向けマーケティング」がことごとく炎上する理由

近年、女性を扱ったコマーシャルや企業プロモーションが、強い批判を受けるケースが増えています。

男性向けの商材だけではありません。女性をターゲットにした商材でも、同じようなケースが多発しています。

 

 

これらに関しては、様々な形で(女性の側からも)擁護する意見がありますし、「このCMは問題ない」という意見を聞いたことも少なくありません。

しかし、いずれにしても、大きな批判を産んでしまうようなクリエイティブが多発していることも事実です。

エンパワメントを重視する海外、「かわいくならなきゃ」の日本

海外と比較すると、その差は明確です。下記2つのキャンペーンはあまりにも有名ですが、女性であることを肯定する内容で、高い評価を得ました。

www.youtube.com

www.youtube.com

ご紹介したものだけではありません。

近年、「エンパワメント」という考え方が浸透し、とりわけ女性をターゲットにした商材においては、エンパワメントなくしてクリエイティブが成り立たないほどです。

例えば、イギリスではすでに広告基準協議会(Advertising Standards Authority)という団体が、性差別的表現を規制することを発表しています。

 一方、日本で「女性応援」というと、なぜか

もっとキレイにならなきゃ

もっと化粧をしなきゃ

もっと可愛くならなきゃ

という表現が多用されています。

 

マネジメント層が「炎上」を過小評価している?

本来ブランドマネジメントを考えている企業であれば、これは極めて深刻な事態であるはずです。

自社の事業にクリティカルな「ブランド」を毀損するような炎上が、何故起こってしまうのでしょうか。

海外の事例を見てみます。例えば、H&Mが、一部オンラインストアで、黒人のモデルに対して「サル」などと書かれたシャツを販売していた件です。

多数の著名人から「もうH&Mとは仕事をしない」などとステートメントを出され、販売計画にまで影響をするほどでした。要は無茶苦茶大事になったわけです。結局、幹部が謝罪することになりました。

しかし、これはあくまで担当者レベルの話で、大きな予算を組まれたキャンペーンでここまで炎上するというのは、欧米では考えづらいでしょう。

日本は、ビッグバジェットのキャンペーンですら、時々炎上してしまう、という点において海外とは一線を画しています。

 

男性マネジメント層に最適化されていくクリエイティブ

男性差別、と思われる広告もあります。

しかし、炎上する内容は、お金を持っていないやモテない男性を馬鹿にしたり、「イケてないおっさん」的なものを揶揄したりするものが多く、自分がイケてて金持ちだと思っている人を批判するようなものは多くありません。

つまり、あくまで男性社会というカーストの中で下位の人を叩くものです。

例えば、消臭剤や芳香剤のCMで加齢臭を気にするのは、若くてかっこいい男性だったり、焼肉食べたあとだったり、野球をやった後の高校生だったりしますよね。


「会議で偉そうなことを言っている社長からも加齢臭が……」みたいなCMは見たことありません。まあCMもたくさんあるので、どこかにあるかもしれないですが(予防線)。

と考えると、日本の広告表現、あるいはクリエイティブというのは概ね、「クライアントである大企業の、男性マネジメント層に最も気に入られそうな表現」が使われているのではないか、という仮説が成り立ちます。

ちなみに、僕は「女性が男性上司に容姿を馬鹿にされて『変わらなきゃ』と気づく」というストーリーを見たとき、いかにもクライアントの偉い人が喜びそうなファンタジーだなーと思いました。

 

そもそも女性経営者が少ない日本

一つの原因は、女性のマネジメント層が少ないことに有ります。例えば、先ほどご紹介した Unilever 社のボードメンバーには、二名の女性がいます。

一方、日本の女性取締役比率は先進国では最低クラスです。東京商工リサーチによると、6割の上場企業で女性役員はゼロ、全体では3.8%にとどまっています。

フランス、ノルウェー、オランダ、アイスランド、スペインなどではすでにクオータ制(取締役会の中に一定数の女性を登用する)を義務付けており、カリフォルニア州でも女性の取締役を義務化する法案が話題になりました。

人口の50%が女性である以上、本来、男女のリーダーは人口比に従うのが自然でしょう。

 

意思決定が現場に降りてこない

もう一つの原因は、意思決定が現場に降りてこないことです。

特に、権限委譲が行われず、上の承認が必要な組織であれば組織であるほど、その「上」に最適化したクリエイティブが増え、思い切ったキャンペーンが打ちづらいのが現状でしょう。

これは、結局のところ、あらゆるマーケティング・コミュニケーションにおいて共通する問題といえます。

つまり、実際にそれを見る人・使う人と、その決済を下ろす人の間に大きな乖離があり、それが解消されていないことこそ、日本の本質的な問題点であるといえます。

 

つまり、これらを総合すると、

マネジメント・リーダーシップが多様性を失い、均質化している 

マネジメントが、現場や顧客を理解できていると思い込んだまま、権限委譲を怠っている

この二つが、日本のマーケティングのブレークスルーを阻んでいるといえるのではないでしょうか。

 

バイアスの先に、新しいマーケットがある

今回はジェンダーの話に絞りましたが、決してこの問題はジェンダーだけの話ではありません。

近年、「○○女子」など、「女性はこんなことやらないだろ」という業界に女性が多数訪れたり、「新宿ゴールデン街」のように、日本人には思いもつかないような場所が観光名所になっていたり、というケースが増えています。

また、インフルエンサー(Instagramer、あるいはYouTuberを含め)が影響力を増していますが、これも「ユーザーに極めて近い当事者」が宣伝するから意味があるわけです。

当事者だからわかること、というのは確かに存在していて、それを理解するためには当事者に話を聞くしかないのです。

 

理解できないことを理解しよう

多分、私には永遠に今の10代のことはわからないでしょう。女性のこともわかりません。10代の女性向け化粧品のクリエイティブを作れ、と言われたらかなり困ると思います。

でも、それは当たり前のことです。私にはそれが理解できない、ということを理解していればいいのです。

多様性とは、他人の目でものを見るということであり、多様性なきマーケティングは、結局のところ独りよがりになってしまいます。


「他人の目」を失ってしまったこと、自分はなんでも理解できると驕り高ぶった決済権者が多いことが、日本のマーケティングを硬直化させ、このような炎上事例を多発させている原因ではないのでしょうか(自戒を込めて)。

 

最後に

女性向けマーケティングを成功させるには、もし自分が当事者でなければ、当事者(か、当事者に出来るだけ近い人)に決めてもらい、それを理解しようと務めること、そして究極的には、自分には理解できないということを理解することが重要です。

うぬぼれないこと、大事。

企業がやる Instagram がたいていダサくなる理由

ある方から「なぜ Instagram が失敗するのか?」という相談を受けたことがありました。

(どう見てもインスタグラマー感のない僕に相談する時点でヤバい気がしますが)

僕はその時、「御社で一番Instagramを使ってそうな人に任せてみればいいんじゃないですか?」と答えました。

これは、まあ大抵のデジタルマーケティングが失敗する理由を回避するためなのですが、今日はその話について。

 

よくある流れ

こんなやりとりが本当にあるかはともかくとして、こういうことはよくあります。

その結果、こうなります。

かくして、なんとなく始まった Instagram アカウントは、永遠にダサいままで運用されることになります。

 

デジタルマーケティングが失敗する理由

だいたいのデジタルマーケティングが失敗するプロセスは共通しています。典型的なのは下記のような例です。

① なんとなくやらなきゃ、と感じて始める
② 担当者に知見がなく、運用コストをかけたくないので外部委託(か部下に丸投げ)する
③ 数字だけ見るからPDCAが回せない
④ 改善しないので永遠に成果が上がらない

要は、「成果を評価する人が、そのプラットフォームに対する知見があるかないか」ということが重要なわけです。

冒頭で言った「なぜ失敗したかわからない(他アカウントとの違いがわからない)」のは、結構致命的です。

例えば、「他のアカウントと比べて写真にセンスがない」とか「投稿の頻度が少ない」とか、それがわかっているならいいのですが、何もわかっていないということはおそらくそれを判断するセンスが無いとわけなので、潔く自分には判断力がないと認めたほうがいいでしょう。

 

サマった数字だけ見ているとダメになる

「一人の死は悲劇であるが百万人の死は統計的な事実である」という有名な言葉があります。

重要なことは、丸まった数字をもらっても、その実態は明らかにならないということです。

それぞれの投稿にどのような意味があるか、価値があるかを把握しなければいけません。

SNS マーケティングの結果をフォロワー数エンゲージメント率の数字だけで判断する、というのは間違っています。

Instagram というマーケット(市場)において商品となるのは写真や投稿そのものです。

どれほど自社製品に対して理解があっても、そのプラットフォームに対して知見がなければ、正しい評価はできません。

数字だけ見ても、本当にその投稿が正しい方向性に向かっているかどうか、判断することはできません。

 

日本企業の悲劇

こんなことは当たり前のことであって、わざわざ書くほどのことでもないんです。

しかし実際のところ 日本の企業では、ろくに自分ではInstagramを使ってなかったり、Twitterを使ってなかったりする人が、フォロワー数やエンゲージメント率だけを見て、SNSマーケティングの成否を評価する立場にいたりします。

EC化を担当する人が普段Amazonやメルカリすら使ってないケースだってあるわけです。

なんとなく今旬だから、他がやってるから、という理由で初めても、自分がそのマーケットに対して理解がなければ、方向性が正しいかも判断することは出来ません。

そうなると、広告代理店やコンサルタントに外部委託することになります。

しかし、広告代理店やコンサルタントは所詮他人です。彼らは顧客の事業に対して責任をおっているわけではありません。

 

日本に共通する問題

日本のあらゆる場所で、意思決定者がトレンドに追いついておらず、善悪の判断がつかない、という事態が起きています。

だから「なんとなく旬だ」と思ってやってるだけの SNS アカウントや、作っただけのオウンドメディアが氾濫するわけです。

なんとなく旬だから始めることにして、やり方が分からないから広告代理店に丸投げして、それで数字が出ないから担当者を詰める。

こんなことで効果が出るはずがありません。何だってそうです。SEO にしろ、広告にしろ、SNS にしろ。

(一体、全盛期につくられたオウンドメディアがいくつ残っているでしょうか?)

 

どういう種類のマーケティングであれ、始める前には戦術と戦略と勝てる可能性があるという確信が必要です。

 Instagram のマーケティングをやるなら、本当に今の人員リソースでや運用コストで、他社に勝てる運用が可能なのかを考える必要がありま。

 なんとなく始めてから どうやって回していくのかを考えるのは、まさに泥棒を捕まえてから縄を縫うような話です。

勝ちパターンを決めないままにマーケットに手を伸ばすのは、危険きわまりありません。

 

大事なこと

大事なことは、一番そのプラットフォームを普段から使っている人に判断を任せることです。

例えば自分が普段、あまりSNSを使わないのであれば、思い切って若手を登用することも考えて見るべきでしょう。

「私は盲目だったが今は見える」という言葉がありますが、自らが判断がつかない、五里霧中であることを潔く認めることが、日本の経営者や意思決定者に求められているのではないでしょうか。

 

最近面白かった記事

 

新聞社ごとのデジタル・マーケティング戦略を分析する

普段、内容で語られがちな新聞ですが、今回はマーケティング的に、どのような違いがあるかについて分析していきます。

今回、分析ツールとして、SimilarWeb を利用しました。

  • このツール、あくまで推定値を表示しているだけなので、実数ではありません。時々外してます。ご容赦ください。
  • 全て、2018年3月の数字です(一ヶ月間だけの数字なので、直近のニュース内容などで左右されている可能性があります)。
  • あくまで推定値なので、混乱を避けるためにグラフには実数(の推定値)は乗せていません。パーセンテージは乗せています。

先行する朝日

まず、Similar Webで確認した、流入元ごとのセッション数の違いを見てみましょう。

 

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全体的なセッション数としては

朝日 > 日経 > 読売 > 毎日 > 産経

という順になります。朝日新聞が先行し、デジタル化をいち早く成功させた日経新聞が続いている、といった状況です。

 

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朝日新聞に関しては、ソーシャルメディアの強さも目立っています。

はてなブックマークからの流入も圧倒的に多く、Twitterからの流入も他社と比べて最大です。

 

デジタル化の日経

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また、日経新聞に関しては、セッションごとの閲覧ページ数、つまりユーザーの回遊率も他のサイトに比べて高くなっています(逆に、毎日新聞の低さが際立ちます)。

 

これらを含めて、デジタル化に最も成功した新聞社は日経新聞である、というのは疑いようがないところでしょう。

 

また、目を引くのが公式アカウントのフォロワー数です。朝日新聞を大きく引き離し、300万人近いフォロワー数を誇っています。

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ブランド力の読売

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こちらは、全体を100としたときの、各流入元ごとの比率です。

ダイレクトの流入(URLを入れたり、ブックマークから流入したり)は、読売新聞が朝日新聞よりも多いことがわかります。

読売新聞は、半数以上がダイレクト流入というニュースサイトとしては異例の多さです。流石は発行部数世界一、と言ったところでしょうか。

 

検索に強い毎日

また、毎日新聞の検索流入への依存度の高さも目を引きます。検索数では、日経新聞と朝日新聞に次ぐ二位となっています。

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記事ごとで見ると、最も検索エンジン最適化(SEO)の施策が成功している新聞社サイトであるといえるのではないでしょうか。

毎日新聞は、記事の転載を許諾しているケースが多く、被リンクが多くなっている可能性があります。

例えば、話題の「加計学園」をシークレットモードで検索すると、毎日新聞の記事がウィキペディアの次に出てきます。

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興味深いのが、毎日新聞を指名している検索が多いわけではない、ということです。

例えば、Google Trends で調べた、過去十二ヶ月間の新聞社の関連クエリの検索は、下記のように毎日新聞が最も少なくなっています。

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また、指名検索での流入割合も、他サイトに比べるとかなり低くなっています。

ニュースサイトとしての立ち位置が必ずしも朝日や産経ほどには明確ではない、という点に一因があるのかもしれません。

 

健闘する産経

Business Journal の2016年の記事によると、各新聞社ごとの販売部数はこのようになっています。

  • 読売新聞 8,959,597
  • 朝日新聞 6,456,861
  • 毎日新聞 3,055,276
  • 日経新聞 2,719,080
  • 産経新聞 1,592,388

この販売部数でセッション数を割ると、結果は下記のようになります。

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読売新聞は、販売部数の割にはデジタル化に成功してはいないことがわかります。

一方、産経新聞は、販売部数に対して、デジタルでの存在感が大きいことがわかります。

また、ソーシャルメディアごとの流入割合で見ると、産経新聞はかなりTwitterからの割合が多く、はてなブックマークからの流入が少ないことがわかります。

f:id:yumaio:20180801185035p:plainこの点も、プラットフォームごとのユーザーの性格が見えて、興味深いのではないでしょうか。

最後に

いかがでしたでしょうか?あくまで外部ツールを使っての分析ですので、実際の数値と違う所があればご容赦ください。

社によって有料記事にしている範囲なども違うため、一概に比べられるものでもない、という批判はあるかと思います。

 

日本もこれから新聞社の大きなビジネスモデルの転換を迎える中で、どのようにデジタル化に対応するかは興味深いです。

それ、本当に需要ある? 起業の前にニーズを確認するべき理由とは

起業のデジタル・マーケティング 記事一覧

  1. 新規事業や起業の「前」に、なぜマーケティングを考える必要があるのか?
  2. それ、本当に需要ある? 起業の前にニーズを確認するべき理由とは

 

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Forbes の記事によると、スタートアップが失敗する理由で圧倒的に多いのは、「そもそもマーケットに需要がなかった」という点です。

前回の集客モデルの点でもお伝えしたように、マーケティングはむしろ、事業を始める前に考えるべきものです。

とすると、そもそもニーズ/需要があるかという点については、どのようにチェックすればいいのでしょうか?

 

目次

 

なぜニーズがないものが出来てしまうのか?

ニーズがないものが生まれる理由の多くは、下記のような「名言」が生み出している神話にあります。

もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。

ヘンリー・フォード 

しかし、顧客が馬を欲しがっていることすら知らなければ、自動車を作ることも出来なかったはずです。

つまり、顧客が何を求めているかを知ること自体は、とても重要なプロセスなのです。

 

それでは、今回はデジタルマーケティングの手法を使って、顧客のニーズを調べる手法を考えていきます。

 

プレ・マーケティングという考え方

マーケティングには様々な意味がありますが、広告だけではなく、顧客の反応を見ながら、コミュニケーションを行うことも含まれています。

そもそも、ゼロから事業を立ち上げるスタートアップは、製品を立ち上げてからマーケティングを始めるというわけには行きません。

つまり、製品を作る前のマーケティング、すなわち「プレ・マーケティング」が必要なのです。

 

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、プロジェクトに共感した出資者が少額を出資し、一定額に出資したときに、プロジェクトをスタートし、実際に製品を作り出すという仕組みです。

 

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これは小規模な企業だけではなく、例えばテスラのモデル3は、生産ラインが確立する前に大規模な事前予約を受け付けています(その結果、量産体制に移るのに苦しんでいますが…)

 

 

プレ・マーケティングについては、別記事で詳しく解説します。

 

Google トレンド

ニーズを調べるのに最も適したサービスの一つが、検索エンジンの推移を調べる Google Trends です。

いくつかのサービスには、その前身になる概念や検索クエリがあります。

 

例えば、テスラと電気自動車を比べてみましょう。2010年位から、電気自動車の検索ボリュームが増え始め、それと同時に少しずつテスラが上昇しています。それに伴って、電気自動車の盛り上がりは一段落しているのがわかるでしょう。

 

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検索されるということはニーズが有るということです。つまり、一定程度検索ボリュームがあれば、そこには何かしらの需要があるということでしょう。

例えば、下記三都市のホテルに関する検索を調べてみると、東京のホテル需要は、日本においては少し減少し、代わりに大阪の存在感が増していることが分かります。

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ニーズを調べる② キーワードプランナー

キーワード プランナーについて - AdWords ヘルプ

 

Google 広告の仕組みは、特定の検索キーワードに対してそれぞれ広告主がオークションを行い、オークションに参加する広告主が多いほど高額になるというものです。

 

顧客がより強いニーズを抱えていればいるほど、費用対効果がよくなるため、そのキーワードは高額になるわけです。

 

Wordstream によると、最も高額なキーワードは「保険」「クレジット」や、「弁護士」など、簡単に言うとより困っている顧客がいるほど、高額になる傾向があります。日本においても、「クレジットカード」などは一クリック1500円〰2000円程度になる傾向にあります。

 

まずキーワードを考え、それがどの程度検索されているか、あるいはどの程度高額なのかを確認することで、現状存在する需要を充分に検索することが出来るのではないでしょうか。

 

ニーズを確認することでマーケティングにも応用できる

今回は、主に検索を利用する方法をご説明しましたが、需要を確認していれば、その後のマーケティング戦略も簡単に立てることが出来ます。

様々なツールを使い、充分に顧客のニーズがあるかどうかを確認しておく必要があるでしょう。